2009年4月20日月曜日

 厚生文教常任委員会道内先進地行政視察報告書 -4-                                                                                          
(2)「奈井江すこやかプラン21」について

① 町は「奈井江すこやかプラン21」を平成18年3月に策定した。
  平成13年、国の基本計画「健康日本21」、道の「すこやか北海道21」、中空  知地域「健康づくり行動指針」をうけ、奈井江町健康づくり計画「奈井江すこや  かプラン21」づくりにとりかかった。

② 最初に行ったことは、町民の健康についての分析、実態把握である。
  成人健康診断のデータから以下の特徴が明確になった。
 ⅰ 死亡原因では、
   がん・脳血管疾病・心臓病による死亡が全体の6割を占める。これは、食事・   運動・休養などの生活習慣の改善により予防出来るもの。
 ⅱ 男性では、
   血圧が高め、肥満が多い、貧血が多い、肝機能の数値が高め、40~50代の   運動不足傾向、喫煙率が高いという特徴がみられる。
 ⅲ 女性では、
   血圧が高め、肥満が多い、肝機能の数値が高め、若い層での喫煙率が高いとい   う特徴がみられる。
 ⅳ また、奈井江町では小学校3年生から高校生までの健康診断が行われており、   その結果から、
   子供が太り気味であること、高脂血症の傾向が小学生からみられる、子供の糖   尿病のリスクが高い、男児に高尿酸や軽度の貧血傾向がみられた。(データの   偏りを防ぐため、学校での身体検査の身長・体重の無記名データと比較し、傾   向に差のないことを確かめている)
 ⅴ さらに問診結果から、子供について
   野菜の摂り方が少ない、お菓子や甘いジュースの多量摂取(中高生に顕著)、   運動不足の傾向(運動については、部活等で運動している子供と運動をしてい   ない子供のタイプの差が大きい)などの特徴が判明した。

③ 国が「健康日本21」計画を誕生させた背景には、人口の急激な高齢化、食生活  や運動など日常生活のあり方を原因とする生活習慣病の増加、それに伴う社会的  負担の増大という問題がある。奈井江町においても健康を増進し、発病を予防す  る「一次予防」に重点を置く対策の必要性は同様である。
  ただし、健康増進計画を作るにしても、行政主導で机上で立案し、さあやってく  ださいといっても町民は動かない。まずは計画づくりの「土壌づくり」から着手  した。

④「健康づくり応援団事業」を始めた。
 ⅰ 町の健康づくり活動を推進するため、健康づくり活動の実践者・リーダーとな   る「健康づくり応援団」をつくる。ここでは、なぜ健康が大切なのか、何のた   めの健康なのかを町民に理解してもらう。
  「ヘルスプロモーション」「住民が主役」「地域力、つながり愛」「世代間交流」   をキーワードに、奈井江町の健康づくり計画「奈井江すこやかプラン21」が   健康を究極の目的としているものではなく「健やかで心豊かに生活できる、い   きいきとしたまちづくり」を目指すものだと理解して貰うため、町民と一緒に   考える機会を作った。  
 ⅱ「健康づくり応援団実践講座」
  「住民参加による健康づくり」「ヘルスプロモーション」など各種のテーマによ   り、専門家の話を聞いたり、ワークショップ、運動、ストレッチ、調理実習、   交流会など多様なテーマによる講座が開催された。その内容は、健康づくり応   援団の町民自身によって決められていった。
   町民同士による話し合いが楽しい、自分の意見が行政に生かされていくことが   体験できるといった感想が寄せられた。
   また、健康フォーラム、健康教室等の事業に、健康づくり応援団のメンバーが   ボランティアとして参加するようになった。
 ⅲ「健康づくり応援団」は健康をキーワードにしたボランティア活動として定着    した。
   自分の健康づくり、家族の健康づくり、地域みんなの健康づくり、をテーマに   高齢者の健康のために、子供達の健康のために、子供を持つお母さんの健康の   ために、働き盛りの健康のために、主婦の健康のために、みんなの健康のため   に、いま何が必要かを考えながらよりよい社会を創る活動に育っている。

⑤ 計画づくり組織であるワーキングチーム・計画策定委員会・庁舎内プロジェクト  チームをつくる。
  ワーキングチーム・計画策定委員会は公募したが、応援団が土台となった。(応  援団の人たちが多く参加し、中心となって活躍した)
 ⅰ ワーキングチーム
   ワーキングチームは54名、「栄養・歯」、「運動・身体機能」、「こころ」、「た   ばこ」の4領域について、グループを作り、各自問題点を挙げ、その解決につ   きどうすればよいか話し合いを行う。各テーマに付き、「自分や家族で出来る   こと」「地域みんなで出来ること」「行政ですること」に分けて検討した。
 ⅱ 計画策定委員会
   計画策定委員会は20名、ワーキングチームから出された内容につき、目標設   定及び検討内容の整理を行う。
   健康意識アンケートの内容検討と課題の抽出、ライフサイクルを意識した内容   の検討が行われ、各ライフサイクルのキャッチフレーズを考案し、計画書の内   容についての最終意見交換が行われた。
 ⅲ プロジェクトチーム
   プロジェクトチームは、健康づくりに関連のある担当課から9名と保健所によ   って構成される。
   ワーキングチーム、計画策定委員会の意見、内容の検討のうえ、各課からの課   題を提示し、「行政ですること」の取り組み内容を検討した。「行政でできるこ   と」ではなく「行政ですること」としたことに意味がある。(役場内部では抵   抗があったことも事実である)  
 ⅳ 奈井江町医療連携運営委員会
   奈井江町医療連携運営委員会は奈井江町医歯会・学識経験者等により構成され   ており、計画づくりにつき報告し、その意見を受けた。
   国は《メタボ》と特定項目の検診を進めるが、この指標だけではわからない病   気も多く、奈井江町においては、総合的健康管理・健康づくり計画が必要との   貴重な意見も出された。
   奈井江町医療連携運営委員会とは、その都度懇談会などを持ち、助言・意見を   受ける体制になっている。
 ⅴ 保健所との連携
   健康づくり応援団の立ち上げの時から、保健所の助言を受けている。
   計画策定についての素案づくりから、打ち合わせ、助言、各組織への参画をし   てもらい、スーパーバイズ(計画の進行に対する第三者からの監督、統括、支   援)を受ける。何か困ったら保健所と相談出来る関係を作ってきた。 

⑥「奈井江すこやかプラン21」
 ⅰ 平成18年3月策定、議会に報告した。
   ダイジェスト版は勿論のこと、計画書はなるべく分かりやすく文字を少なく、   絵や図版を多数用い、見やすいものとすることを心がけた。 
 ⅱ 策定にあたっての特徴
   検診結果の分析、町民の生活スタイルや健康意識の調査、児童生徒の実態調査   など、実態の把握に努めている。
   町民、食生活改善委員会、健康づくり応援団などの関係者からなるワーキング   チームをつくり、その意見をもとに策定委員会を組織する。
   さらに行政関係者でプロジェクトチームをつくり、町の現状と特長を生かした   計画づくりを行った。
 ⅲ 基本方針
  指針1 住民参加、住民主体の健康づくり。
   町民の考え方が健康づくり対策に生かされるよう、町民の声を大切に進める。  指針2 生活習慣の改善を視点に。
   食生活、運動、ストレス、喫煙などの生活習慣に合わせて、健康づくりのため   に取り組みやすい内容を考えた。
  指針3 健康づくり活動推進のための環境づくり。
  健康なまちづくりを進めるために、関係者が手を取り合って協力し合い、地域   全体で積極的な健康活動づくりを進める。
 ⅳ 内容の特徴
  ライフサイクルに応じた健康づくりを明確に打ち出している。
   「すこやかポイント」を各年代の「ライフサイクル」ごとに分けて検討し、健   康づくりを「栄養・歯」、「運動・身体機能」、「こころ」、「たばこ」の4カテゴ   リーに大別した。
  目標に対する評価の指標を明確化している。
   各カテゴリーに対し目標設定をすると共に、評価の指標を定め取り組み内容を   整理した。 
  計画推進と評価についての検討。
   計画の推進体制を、計画の中に記載した。
  「奈井江すこやかプラン21推進委員会」「奈井江すこやかプラン21推進町民   委員会」を立ち上げ、計画推進とその評価を行う。
  「推進委員会」は、関係者により構成されるものと、町民により構成されるもの   の2種類を設置、計画を作って終わりにならない。
   重点項目を一度に全て達成するのは難しいので、各年度ごとに重点事業を設定   し、計画を推進する。

                                     

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