2009年4月20日月曜日

 厚生文教常任委員会道内先進地行政視察報告書  -3-                           

B 病診連携開放型共同利用病院                                          
 ① 開放型共同利用病院とは、地域で開業医をかかりつけ医としている住民が、町   立国保病院に入院する場合、今までかかっていた開業医の先生をそのまま主治   医にして入院できるシステムである。この場合、今まで診ていた開業医は主治   医となり、入院先の町立国保病院の医師は副主治医となる。
   今まで診ていた開業医は町立国保病院まで回診に行き、病院の勤務医と共同で   診察にあたる。看護スタッフも共同して看護に携われる。

 ② このシステムの良さは、以下の点にある。
   長年信頼を寄せていたかかりつけ医、その看護スタッフから切り離されず、継   続性が保たれることで患者の精神的安定が図られる。
   開業医が町立国保病院の医療機器などの設備を自由に利用出来る。即ち、高額   の医療機器や高度のシステムあるいは人員を独自に持たなくとも、電話1本で   病院側が対応し、検査結果は勤務医のコメント付きで開業医に返送される。開   業医はその意見を参考にしながら診断できる。
   医師同士の連携だけではなく、看護スタッフや他の医療スタッフの力の連携共   同により住民の生命・健康の維持が図られる。

 ③ 町立国保病院は診療科目4科(内科、整形外科、眼科、小児科)となっている。
  ベッド数96床、一般病棟46床(内開放型病床12床)、医療療養型病床群   20床、介護療養型病床群30床で、病床割合から見ても慢性期の患者を中心   とした医療に力点が置かれていることがうかがわれる。
  なお、介護療養型病床群30床は国の方針により平成24年をもって廃止され   る。奈井江町はこの患者を介護難民・医療難民としないため、「介護療養型老   人保健施設」への切り替えの検討を行っている。
   医師は常勤・非常勤・嘱託合わせて9名となっており、看護師は正・准・助手   含めて52名、一般病棟15:1の体制である。

  ④ この制度は開業医の登録が必要であり、空知医師会の協力を得ている。
   しかし、実際に利用するのは、町内の3医院に限られている。
  診療報酬は、登録医(開業医)は3,500円(350点)、病院は2,200円   (220点)となる。また、介護型療養病床、老人保健施設、特別養護老人ホ   ームについては費用弁償として1日1回あたり3,500円を支払う。
   診療報酬上患者負担は増となるが、制度の趣旨や利点を理解して貰うよう医事    係長と主治医からよく説明している。患者には安心感をもって受け入れられて   いる。

  ⑤ 平成19年度は町立国保病院の医師3名との連携で事業が運営されており、延   べ利用人数2,735人1日平均7.4人となっている。
   また、高度医療機器共同利用などについては、CTスキャン51件、生化学、   病理等病院検査施設の共同利用は、11,189件である。(臨床検査技師が毎   日2回、午前と午後に検体の収集を行う)
   また、老健、特老への継続診療は「健寿苑」が延べ3,364人(日平均9.2   人)、「やすらぎの家」が1,961人(日平均5.4人)となっている。  

 ⑥ 奈井江町では町立国保病院の改築構想と共に町の地域医療体制の整備を図るべ   く、平成元年「地域医療懇話会」が設置された。
   ここで地元医歯会、町議会、行政の関係者が集まり、新しい地域医療のあるべ   き姿や医療・保健・福祉の連携のあり方について時間を掛けて協議をした。そ   の中から「安心して医療を受けられるシステム」「かかりつけ医の確立」を目   指して平成6年、病院の全面改築を機に「病診連携開放型共同利用事業」がス   タートすることになる。
   現在は奈井江町医療連携運営委員会として、医歯会7名の医師・歯科医師、副   町長、町立国保病院院長による協議の場を設け、医療・保健・介護について継   続的に協議を行っている。
   このほか、以前から開催されていた、医歯会・教育委員会・学校長・養護教諭   の4者による「奈井江町学校保健懇談会」に平成15年保健師が加わり、保健   師の目から見た子供の健康づくりに関する専門的な助言を学校側が受けること   ができるようになった。また保健師は養護教諭から学校や家庭における子供の   健康管理に関する情報を得ることができる。
   学校と家庭を、保健を通して繋ぐ包括的体制が構築されている。

 ⑦ このような「病診連携開放型共同利用事業」がきちんと出来るかは、結局のと   ころ人の問題といわれる。この取り組みに関わる人たちが、どれだけその趣旨   や理念を理解するかにかかっている。医療は共同作業であり、医師、看護師、   そのほかの医療スタッフ、事務局員などすべての職員、関係者の十分な理解な   しには開放型共同利用や病診連携は成り立たないし持続出来ない。
   また、病院の勤務医と開業医が同等の立場に立って、この事業を構築していく   ことが必要である。
   この制度を導入したものの、引き継ぎがうまくゆかず、後継スタッフは外から   来る患者に関わりを持ちたがらず、患者を送っても検査は後回しにされ、開業   医も一般入院患者として送り込み、自分は回診に行かないといった状態になっ   た例もある。
   また、行政の役割も大きい。行政がこの事業の趣旨をよく理解し、積極的に取   り組んで行くこと、首長の見識とリーダーシップに負うところ大なることは言   うまでもない。
  今後における課題は、当初の立ち上げに関与し、熱い思いを以て構築に参加し   た人々がいなくなった後、どのようにこの意識を継承しシステムを発展させて   いくか。また行政として支援体制をきちんと保っていけるか、にあるとする。

C 砂川市立病院との医療連携
 ① 平成17年10月20日奈井江町は砂川市との間で自治体病院の再編、ネット   ワーク化を推進し、医療資源の有効活用により、安定的・継続的な医療供給体   制を確保するため、砂川市立病院と奈井江町立国保病院の医療連携に関する協   定を締結した。
  内容は、以下の8項目に及ぶ。
  ⅰ 医師の派遣に関すること。
    市立病院からの医師派遣を受ける。
    臨床研修医協力施設として研修医を町立国保病院が受け入れることで、訪問    医療などの市立病院ではできない研修が可能となる。
  ⅱ 病床の有効利用に関すること。
    急性期医療と慢性期医療の区分に応じた病床の有効利用を図る。
  ⅲ 患者の紹介に関すること
    市立病院からは、急性期治療を終えた入院患者を紹介し、町立国保病院から    は入院が必要な外来患者を紹介する。
  ⅳ 医療機器等の共同利用に関すること。
    共同利用が可能な高度医療機器は、CT(コンピュータ断層撮影、Computed     Tomography ),MRI(核磁気共鳴画像法、Magnetic Resonance Imaging), R I(核医学検査装置Radio Isotope)など。
  ⅴ カンファレンス、研修会等の合同開催に関すること。
    それぞれの病院で開催しているカンファレンス(臨床検討会)や研修会を合    同開催することで双方のレベルアップを図る。
  ⅵ 医療情報の共有化に関すること。
  患者の紹介に伴い、患者に関する医療情報を共有化する。転院先での医療内    容がわからないといった不安が解消され、医師も転院後の治療過程が分かる。
  ⅶ 総合情報システムのIT化に関すること
    電子カルテシステム、画像転送システムの構築、総合情報システムの統合を    図る。
  ⅷ 病院の運営形態の検討に関すること 
    効率化の徹底、地方公営企業法の全部適用、地方独立行政法人等の経営手法    の検討、保健・医療・福祉に係る総合的広域連合の検討を行う。平成22年    度を目途とし実施可能な事項から逐次実施するとしている。なお、医師の派    遣は既に行われている。

 ② 今日、病院と病院の連携は個々の病院の問題ではなく、効率的医療サービスを   どう提供し、その地域でどのように住民の健康を支えていくか。解決の急がれ   る大きな課題である。
   医療連携とは、地域の医療機関が施設の実情に応じ、医療の機能分担や専門化   を進め、相互に連携をはかることで、CT,MRI等の高度医療機器や専門医   療技術を有効に活用し、地域住民が都市部の大病院に行かなくとも適切な医療   を受けられることを目的とする。即ち、1つの病院がすべての医療機能を提供   するのではなくそれぞれの医療機関がもっている特有の機能を生かしながら役   割を分担していくものである。
   奈井江町は地域の中核病院である砂川市立病院と町立国保病院との医療連携を   行うことにより、1次医療・2次医療の役割を明確にし、今日の急性期医療、   高度化専門化する医療ニーズに対応しようとする。

 ③ 砂川市立病院は、診療科目18科、医師数67名、病床数519床の病院で、   中空知地域センター病院、救急告示病院、へき地医療拠点病院、災害拠点病院、   地域周産期母子医療センター、地域がん診療拠点病院、第2種感染症医療機関   等の指定を受けている。
   今回の医療連携は、町立国保病院にとっては高次医療の提供、安定的継続的医   療の提供が可能となると同時に、拠点病院である砂川市立病院にとっても町立   国保病院との役割を明確にすることで医療の水準を上げ、へき地医療・がん診   療機能の強化充実につながる。  

 ④ この医療連携により、
  ⅰ 新臨床研修制度による連携、小児科医師の派遣が行われている。
  ⅱ 脳卒中地域連携パスが行われている。
  クリニカルパスとは、一定の疾患・疾病を持つ患者に対して、入院・指導・    検査・ケア処置・退院指導などの計画をたて、スケジュール表にまとめるも    の。
    地域連携パス(地域連携クリニカルパス)とは、患者の治療・看護・介護・    リハビリ等多くの関係者が協議して、患者の情報を切れ目無く受け渡し、そ    れぞれの施設などに於いて的確な処置が可能となり、地域が一丸となって関    わっていくことを可能にするというもの。
    地域連携パスを導入することで、診療計画を協議して計画の素案を作り、そ    れに基づいて患者の紹介をすることができる。
  ⅲ 研修会の合同開催が行われている。職員の資質向上が図られる。
  脳卒中地域連携パス研修会、NST(栄養サポートチーム)研修会、医療安    全管理研修会などが行われ効果を上げている。

 ⑤ 今後における課題としては、病院同士連携だけではなく、開業医を含めた地域   の病院・開業医が役割分担をきちんとした上で、情報ネットワークシステムを   作っていくことが大事である。患者の状態に応じた医療機関の機能分担と情報   の共有をはかるシステムづくりが求められる。 





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